本州生まれの本州育ちの自分が北九州市に移り住んだのは、大人になってからだ。
「車を買ったら、宗像大社でお祓いしてもらうんですよ」
「出光の創始者は、とても宗像大社を大切にしていました」
宗像大社の御祭神である宗像三女神はあらゆる道の最高神。
道路だけでなく、様々な道を司る、最も高貴な神様。(「道主貴(みちぬしのむち)」とも呼ばれる)
そんな神様を祀る神社は、広々としていて、参拝者が多い日でもゆとりがあり、のんびりできる。
市街地で暮らしていた頃、疲れを感じたら宗像方面に行って、散策するようになった。
ときには手ぶらで、ときにはカメラを持って。
ある時、ちょうど行こうと思った日を宗像大社のホームページで調べたら、詳細は分からないが高宮祭場で秋季大祭が行われるという情報が目に付き、一応カメラを持参して行ってみた。
すると、いつもは閉じている高宮祭場の木の扉が開いていた。
周りには数名のカメラを持った方々。
「あの、何かあるんでしょうか?」と尋ねたら「ちょうどいい、今から始まりますよ」と言われた。
何が始まるのか見ていたら、正装姿の男性陣がやってきた。
扉の中に入っていく。
それに続き、「あなたも一緒に」とカメラマンの方々と中に入ることができてしまった。
なぜか祭礼行事に参加できることになったうえ、「撮影?どうぞ!」と許可までいただいてしまった。
作法など分からず、見よう見まねで頭を下げたり、目を瞑ったりして、何とかやり過ごした。
今思い出しても、あれが何だったのかはよく分からないままだけど、貴重な体験であったことは間違いない。
秋が来るたびに思い出す、僥倖。
(以下の写真は2019年10月3日撮影)