「天照大神は男神」説と謎多き神「スサノオ」をつなぐ木の神「句句廼馳神」

「天照大神は男性ではないのか？」という記事を最近は結構目にするようになりました。

天照大神といえば、よく分からないけど「卑弥呼」っぽい気がしますよね。

ずっと前は私もそう思っていました。

それが史跡巡りにどっぷり浸かってから、書籍を読んだりネットでも調べていくうちに私も「そんなことなら、男神かも…」と思うようになりました。

とはいえ歴史を専門にしているわけではありませんし、その根拠について明確に判断できるわけでもないから記事化できずにいました。

しかし最近お会いした方々から「分かる範囲で書いてみては」「フィクションとして書いてみては」などとアイデアもいただいたので、自分の思考の整理も兼ねて、アウトプットしておこうと思います。

以下につらつらと綴っていきますが、「天照大神は男神である」と断定するものではなく、なぜそう思ったかたについて、書いていきたいと思います。

子どもの頃に見た、和歌山県の高野山の景色、平城京の景色などを見て、「歴史、カッコいい！」と視覚的に歴史の面白さに目覚め、大人になってからも史跡巡りをしてきました。

そうしているうちに、一つ一つ疑問が出ると、ネットや本で調べるようになっていきました。

フォトライターという仕事柄か、視覚的にも「なぜこの巴紋の向きが反対なのか」とか「今まで見たことがない由緒書きの説明だ」と細かいことがやたら目に付くからです。

そんな中で読んだ、菊池展明氏の著書「円空と瀬織津姫」には、はっきりと「天照大神は男神」と書かれていました。

江戸時代初期、各地を巡りながら12万体もの仏像を彫ったとされる修験僧・円空（1632–1695）。

円空は仏師であると同時に、山岳信仰や密教に深く関わる修行者でした。

とくに注目すべきは、天照大神を「男神」として彫っていたこと。

そんな円空以外にも「天照大神の人形」にはヒゲがあったとか、翁の姿であったという情報が見つかりました。

以上のことから、ぼんやりと「天照大神は男神？」と考えるようになりました。

男神であったとしたら、何故、どうやって隠していったのか。

そもそも記紀が隠してしまったというのなら、歴史の専門家でもない素人がどうにもできないと思ったのですが、史跡を巡るうちに、不思議とヒントが現れていきました。

天照大神について直接ではなく、同じように、隠されたり変えられたりしている情報を見つけました。

記紀の編纂前と、明治維新の頃に、為政者側にとって好ましくない史実が隠されり消されたという説です。

たとえば明治維新の時代には、廃仏毀釈が起こりました。

外国から来た仏教は排除され、仏像は燃やされました。

それだけでなく、その時為政者側によって御祭神の名がかなり変更されたと、菊池展明氏の著書「円空と瀬織津姫」でも書かれていました。

何故そんなことが分かるかといえば、明治時代以降と、それ以前の神社の資料を見れば変化を確認できるからです。

為政者が本当に何かを隠したのかとか、何のためにそうしたのか、自分では判断ができませんが、「消えた」「変わった」事実を確認することはできるのかもなぁと、この時に思いました。

「天照大神は男神なのか？」という謎を頭の片隅に置いて史跡巡りを続けていくうちに知った、「伊良原（いらはら）」。

福岡県みやこ町のダムの底に、大部分が沈められた町。

そこは「隠れ里」として千年以上同じ暮らしが続いたそうです。

千年間って遡れば平安時代ではありませんか。

ダムに沈む前に、伊良原についてかなり詳しく調査書にまとめられていて、ダムに沈む神社の御祭神の名前を見ていきました。

すると、このあたりではあまり見かけていなかった「句句廼馳神（くくのちのかみ or くぐのちのかみ）」という名の御祭神を見つけます。

数は少ないようですが、御祭神としてお祀りしている神社もあるようでした。

その「句句廼馳」について調べていたら、意外にスサノオも木の神様であることが分かりました。

スサノオといえば祇園祭りで有名な八坂神社の御祭神です。

厄除けだけではないのです。

スサノオといえば八坂神社の御祭神であり、厄除け、商売繁盛、家内安全、交通安全、子孫繁栄、学業成就、芸能上達など多岐にわたるご利益で知られています。（他にも暴風雨・厄払い）

木の神様でもあったのですね。

複雑過ぎて正体が分からないとも言われる謎多き神「スサノオ」。

「出雲王国とヤマト政権」（富士林雅樹：著／大元出版）を読むと、出雲の王家の伝承が伝えられていました。

そのなかに、「スサノオ」は「徐福」であり「饒速日（ニギハヤヒ）」であり「火明（ホアカリ）」であると。

秦の始皇帝から不老不死の薬を探すように命を受けた徐福が、最初にやってきたのは出雲で、日本風の名前にし「火明」と名乗り、その後、秦に戻った徐福が次に日本に訪れたのは佐賀で、その時は「ニギハヤヒ」と名乗ったと本に書かれていました。

それを読んで、かつて訪れた宮若市の天照神社で、御祭神が「天照国照彦天火明櫛玉饒速日尊」と書かれ、「天照とえいば女性ではないのだろうか」と疑問を持ったことを思い出しました。

天照＝火明＝饒速日はここでつながります。

謎多き神「スサノオ」と同じ木の神である句句廼馳神に話を戻します。

新潟総鎮守「白山神社」のWebサイトに「句句廼馳の神（くくのちのかみ）」の記述がありました。

白山神社の御祭神である菊理媛（くくりひめ）の「くく」とは句句廼馳の神の「くく」と同じ、つまり関連があるということ…ですよね。

男神と女神。

この記事で先に触れた、天照大神を男性の姿で彫られた円空像のなかには「瀬織津姫（せおりつひめ）」の存在を想起させるような像（「阿賀田大権現」の像）も見受けられたそうです。

瀬織津姫は古代神道における水の神、禊祓（みそぎはらえ）の神であり、天照大神の「荒魂」とされています。

天照大神が男神なら、荒魂である瀬織津姫は女神。

句句廼馳の神と菊理媛。

男性と女性、陽と陰、一対の関係が現れます。

以前上の記事でも触れましたが、「瀬織津姫は豊玉姫である」という論文を参考に史跡巡りをしていたところ、国東半島の北端にある小さな神社の鳥居に「伊美崎社 菊理媛命」と刻まれていました。

また菊理媛は「水」と「おはらい」の女神様であり、瀬織津姫と共通点があります。

移住した豊前市からすぐ近くの上毛町の八坂神社で祀られていた瀬織津姫。

気になってその神社を調べてみたら、かつては「瀧ノ宮牛頭天王（たきのみやごすてんのう）」と呼ばれていたそうです。

白鳳時代に建立されたという白鳳寺院「垂水廃寺」の境内に、この地に疫病が蔓延した養老年中、兵庫県姫路市の廣峯神社から勧請され祀られたのが、瀧ノ宮牛頭天王の始まりだったという情報をこちらの記事で見つけました。

瀧といえば瀬織津姫ですが、気になって「瀧」と「牛頭天王」を調べてみたら、香川県綾歌郡綾川町滝宮の「瀧宮神社(牛頭天王社)」が見つかりました。

地名と神社名に「滝（瀧）」が付きますが、御祭神はスサノオです。

さらに調べてみると、「滝宮」と「スサノオ・八坂神社」に関連があるのか同じ疑問を持つ方の記事を見つけることができました。

滝とスサノオには、関連がありそうです。

こうして一対となる男神と女神や、歴史から消えようとしている御祭神を追ってみると、いくつもの共通点が見つかるため、足を止められずにいます。

歴史の専門家ではない自分ができることといえば、実際に残ったもの、消えてしまった痕跡を拾い集めることぐらいですが、いつかそれらがつながって「こういうことでした！」と分かったら面白いだろうなと思いながら。